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久野はすみの短歌と日記


by hasumi-kuno
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4月6日 恥ずかしい

詩も演技も、基本的には非常に恥ずかしいものだ。
思い入れがあればあるほど
冷静になって読み返すラブレターのように恥ずかしい。
表現が未熟なら恥ずかしいのはあたりまえだが
もっと根本的な恥ずかしさが、詩にも演技にもある。

研究所の授業で、ある芝居の一場面をペアで演じていたときのこと。
せりふをひとつふたつ言ったところで演出家からストップがかかった。
「だめだだめだ、そんな口さき芝居」
演出家は、BGMのヴォリュームを思いきり上げた。
「男は走れ!」
ペアの相手はわたしのまわりをわけもわからず走りはじめた。
「もっと早く!もっともっと!」
わたしたちは隙を狙うけもののようににらみあった。
アトリエの薄暗い空間に、激しい音と演出家の怒鳴り声がひびく。
ひたすら走りつづける相手。
立っているわたしの息も、心臓も、脳も、次第にかき乱されていく・・・
そのとき、音楽のヴォリュームがスッと低くなり
わたしは身体中から絞り出すようにせりふを叫んだ。

何かを超えた瞬間。
二度と起こらなかった奇跡。
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by hasumi-kuno | 2005-04-06 18:31 | 日記